Neurohog Reports

日米英で学校を卒業して、それぞれの大学・研究・テニス・海外生活について記事と漫画にしています。

最も正確な大学ランキングはどれ?・番外編【論文ランキング/Nature Index】

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前編後編では大学ランキングを見てきましたが、この番外編ではNature Indexと呼ばれるNature誌の公表している研究力の指標を見てみたいと思います。番外編にしたのはNature Indexは大学のランキングというよりは学位を出さない研究機関も含めた論文数ランキングだからです。

 

  

 

前編・後編はこちらから

一般的な、ランキング会社の出す大学ランキングをどう大学・大学院選びに使えばいいか解説した記事はこちらになります。

もちろんこれらを読まなくてもわかるように書いていきますが、読んでおくとより理解が深まるかと思います。

 

Nature Indexは有名誌への掲載論文数ランキング

ランキングの方法

簡単にNature IndexはNature Groupの言うところの最も優れた約80誌に掲載された論文の数を著者の所属でカウントしていくものです。AC: Article Countは純粋な論文の数、FC: Fractional Countは複数著者がいる場合に人数の割合で論文のカウントを分ける方式です。

例えば、ある論文の著者が

  • A氏(東大所属)
  • B氏(Harvard所属)
  • C氏(Harvard所属)

の三人なら、ACランキングでは東大とHarvardにそれぞれ1点。FCランキングでは東大に0.33点、Harvardに0.67点となるわけです。

 

Nature Indexのカウントする論文は有名雑誌のみ

こちらがNature Indexにカウントされる論文の種類です。約80種と聞くとすごい数に聞こえますが、全専門を合わせて80ですから意外とあ、この学術誌はカウントしないんだと言うのが結構あります。まあそれでも超一流とされる学術誌は漏れずにリストされているので、大きく研究機関全体の実力を測るには有効な指標だと言えるのではないでしょうか。

 

Nature Indexに寄せられる批判の一例

  • カウントされるのが特定の学術誌のみという仕組み *1
  • 論文の著者欄を見ると何じゃこりゃというほど一人に所属がたくさんある場合も珍しくありません。実際の拠点は1つですからランキング的には得する所属先がある *2
  • Nature GroupというPublisher側のランキングを重要視する風潮は不健康

 

Nature Indexランキング

Academic Sectorのランキング

Nature Indexのより正確とされるFCのランキングのうち、研究機関をのぞいて大学だけのランキングを出して、私が正確だとおすすめするランキングと比べてみましょう*3 比較する大学はUniversity of Washington、東京大学、Harvard Universityです。

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おや、と思った人も多いのではないでしょうか。そうです。控えめに言って似てます。研究に力を入れるUWのランクが少々高いぐらいでしょうか。強力な論文を出すところが評判がいいという結果ですから、当然といえば当然似たとも言えます。

Government Sector & Non-profit Sector 

Nature Index特有の良いところとして、大学以外の研究機関もリストされているというのがあります。Government Sectorランキングでは理研が世界6位、その下の7位にNASAがランクされていたり、Non-profit Organization SectorランキングではドイツのMax-Planckがずば抜けて1位で、そのはるか下の16位に我らがFred Hutchinson Cancer Research Centerがきたりしています。*4 全Sectorを合わせてみることもできますが、各セクターでさらに各分野ごとに見るのがおすすめです。世界的にどんな研究所が優れた業績を上げているか知ることができます

 

Normalized FC-index

OISTこと沖縄科学技術大学院大学が世界9位にランクされたことで話題になったのがこの指標です。FCのポイントをNature Indexでカバーされない論文も合わせた論文総発表数で割るという何だかよくわからない算出方法ですが、つまるところ発表する論文がいい雑誌に載る割合ランキングということらしいです。幅広くたくさん論文を出す大きな研究機関が沈みがちなわけで、ランキングも解釈の難しいものになっています。*5 一応断っておきますと、第1位のCold Spring Harbor Laboratoryは素晴らしい研究施設ですし、OISTも素晴らしい環境を持っていると思います。*6

 

使い所の難しいNature Index

完全に数字で算出されるランキングであるがゆえに、偏りが出やすいランキングなので、教育面も大切な学・大学院選びには教員の評判を集めたランキングを使う方が無難と思います。

研究機関のリストがあるのを活かしてポスドクやパーマネントポジションをどこで取ろうかというレベルでのリストアップには使えるかもしれませんが、そのレベルにまで到達しておいてランキングに頼るというのはちょっと問題がある気もしますね。

そうなると自分と異なる専門分野の研究所を調べたり、学生がこんな研究所の名前聞いたけどすごいのかなと調べるのに使うのがいいのではないでしょうか。

 

はりねずみ的にまとめると...

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*1:全体のcitationの30%程度しかカバーされていないとか何とか

*2:某国のランキングが国策で力が入れられているとはあまりに高過ぎるにはこのあたりの要因もあります。

*3:何でそれなのかなと思った方は前編・後編をどうぞ。

*4:挙げる研究機関が全体的に身内びいきですみません。

*5:ランキングを総論文発表数に並び替えると論文数の多い機関が軒並み苦戦しているのがわかると思います。

*6:正直逆に2位と3,000差の9,000以上の論文を出しつつ、normalizedでも19位にランクされるHarvardの異次元さが目につきます。