日本では中学受験から大学受験まで偏差値で格付けされますが、世界規模で大学を比べる時には偏差値は使えません。各国それぞれ入学試験も基準も違うからですね。それでも人は比べたがるもので、世の中には世界大学ランキングが何種類もあります。
ランキングの使い方
そもそもランキングなんて見ても仕方ないという声もあると思います。私もその大学が7位か8位かみたいな順位刻みに意味があるほど厳密な大学ランキングは存在しないと思いますし、ランキングだけで進学先を決めるのもオススメしません。しかし大学側がランキングを宣伝して良い学生を集めようとしたり、移民審査に使う国があったり、社会的に活用されているのも事実です。また大学を選ぶ際にある程度の指針がなければ、星の数ほどある大学から出願先を決めるのは困難と言えるでしょう。
ランキングでは大学は測れないという綺麗事では出願校を決める高校生や大学生の助けにはならないのです。それなら、1番信頼のできるリストを使って欲しいという思いでこの記事を書いています。ただしそのランキングだけで決めるという使い方ではなく、候補をリストアップするのに使うのがオススメです。
三大世界大学ランキングと最古の大学ランキング
リストに上げた大学ランキングのリンク
世界大学ランキング業界の最大手として、QS World University Ranking、Times Higher Education World University Ranking、Academic Rankings of World Universityがあり、これに加えてアメリカの大学のみのランキング最大手のUS News and World Reportが近年出し始めたBest Global Universities Rankingがよく見られているランキングと言えるでしょう。ランキングを見ていくのにあたって一校一校見ていくのは大変な上わかりにくいので、私の母校であるUniversity of Washington、母校になる可能性の高いUniversity of Tokyo、世界で1番有名なHarvard Universityの三校に絞って見ていきたいと思います。
四大世界大学ランキングの比較
図1を見ると分かるようにHarvard Universityは常にトップに、QS以外ではUniversity of Washington > University of Tokyoの図式になっています。*1 両校には教授、学生レベルの両方に知り合いが複数居ますが、正直言って学生、研究のレベルは東大の方が上です。*2 母校の名誉の為に言っておきますがUW *3 は確かに素晴らしい大学で、研究環境や学生の指導、立地など確かに東大より上だと思われる部分もあります。
東大がUWにランキングで負ける理由
東大がUWやその他の欧米大学にランキングで負けるのは、正規留学生の少なさが原因です。*4 日本語ができなければ日本で学位を取るのは容易ではありません。まして欧米からは飛行機で10時間。どう英語学位プログラムを作っても限界があります。しかし日本の人口1億2000万人の中で最も優秀な人たちが集まる大学は、3億2000万人とは言えアイビーリーグだけでも8校に才能が分散されるアメリカのトップ校に比べて、果たして学生・教員のレベルで劣っているでしょうか?私はそうは思いません。この辺はまた他の記事にしたいと思いますが、日本の大学は留学生スコアに足を引っ張られているというのが大筋です。*5
QSのRankingでは東大がUWに勝てる理由
QSはランキングの中でも正確性が高いと評判ですが、図1の通り順位の序列が明らかに他の3つとは違います。これはQS RankingがAcademic Reputationのスコアを重要視している為です。Academic Reputationとは世界中の大学の教員に自分の専門分野でトップと目される研究をしている大学名を上げてもらうアンケートの結果をスコア化したものです。このスコアだけに絞って並べ変えると、東大の研究は各国大学の教員から世界7位の評判があることがわかります。*6 また、CaltechやETH Zurichなど特定の専門分野で猛威を振るう大学はこのスコアでは苦戦します。例えば文学の教授はCaltechが文学に強いとは言わないからですね。
最も正確な世界大学ランキング
私の意見では、研究・学生・教員のレベルを指し示すランキングとして最も正確なのはQS World University Ranking、それもAcademic Reputationのみでの並べかえです。もっと言えば、QS World University Subject Rankingと呼ばれる分野別のランキングでAcademic Reputationを使って並べかえると候補をリストアップするにはかなり良いと思います。
QS Academic Reputation Ranking
見てきた三校を含めてランキングをAcademic Reputationのスコアだけに絞ると
- 1位 Harvard University
- 2位 Cambridge University
- 6位 University of California, Berkeley
- 7位 University of Tokyo
- 20位 Kyoto University
- 54位 University of Washington
- 62位 Osaka University
となります。私はHarvard、Cambridge、UC Berkeley、Kyoto Universityの全てに同級生がいて、実際にキャンパスも訪れたことがありますが研究・学生・教員のレベルとしてはまさに妥当だと思います。 *7
Academic Reputation Rankにすると日本の大学の評価はどうなるか
ランキング100位以内には東大、京大、阪大、東工大、東北大の5校。200位内にはさらに名大、早稲田、北大、九大、慶応と続きます。日本の研究、大学は巷で噂されるよりも大学教員達にしっかり評価されているのです。また帝京大学が早慶より上にランクされてしまうTimes Higher Educationよりもよほど正確であることがわかると思います。*8
もっとも、研究の評価が高いからと言って日本の大学はこのままで大丈夫というわけではありません。学生の指導体制や支援体制から研究設備まで明らかに欧米、あるいは中国にも劣っている部分は今後改善していく必要があると思います。ただ前述の留学生スコアの為に無理やり英語学位プログラムを設置したりするのは、かえって世界の学生の評判を悪くしかねないので気をつけて欲しいところです。*9
後編へ続く
長くなるので、
- 図2にあるような私が高校時代に実際どうやってランキングを使ったか
- QSのSubject Rankingがいかに優秀か
- 神経科学の分野で大学・大学院選びにどうQSを使えば良いか *10
の三点は次の記事にまとめたいと思います。気になった方は是非どうぞ。
番外編としてNature Indexを扱っています。
はりねずみ的まとめ
*1:この記事を書いているうちにTimes Higher Educationの2020年版が公開されてUniversity of Washingtonが26位に、東京大学が36位になりましたが図1の序列はそのままになります。タイミング悪過ぎやろ。
*2:母校の知り合いに怒られそう。
*3:ここからUniversity of WashingtonはUWで略していきます。長いんで。
*4:留学生スコアはどれだけ大学が世界的に真剣に受け止められているかを示しているとされています。
*5:Citationスコアも低いですが、Citationもつまるところ英語圏の大学に有利で、大学の力を測るのに適しているとは思えません。
*6:一人約20校程度挙げるらしい。
*7:バークレーは州立なので若干変な学生も混じっている気がしますが、研究力と教員のレベルは折り紙つきです。
*8:帝京を悪く言うつもりはありませんが、早慶より上というのは無理があると思います。
*9:海外のネット投稿では東大の留学プログラム生が痛烈に批判していたりする。
*10:Subject Rankingの分野には「神経科学」がありません。なんでやねん。