Neurohog Reports

日米英で学校を卒業して、それぞれの大学・研究・テニス・海外生活について記事と漫画にしています。

岡崎の最終兵器こと自然科学研究機構(総研大)、その実態とは【基生研・生理研・分子研】

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 大学生ですら自然科学研究機構と聞いてパッとなんのことを言っているかわかる人は少ないのではないでしょうか。自然科学研究機構とは国立天文台や核融合科学研究所を含む国立の研究所の集合体です。今回はその中から岡崎にある基生研・生理研・分子研の3つを主に紹介していきたいと思います。

 

 

 

前置き

実際に自然科学研究機構でインターンしたこともあり、正確な情報をお伝えしているつもりではありますが、最新の情報でない場合等も考えられます。この記事をだけを根拠にすることなく、関係機関にお問い合わせをすることをお勧めします。何かしら問題、訂正がある場合にはこの記事にコメントして頂ければ順次対応します。

 

自然科学研究機構はみんなのもの

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自然科学研究機構は大学が共同利用するために作られた施設

スーパーコンピューターや、巨大な測定機など高額でかつ大規模な装置はいかに大学とはいえども購入が難しい場合も多くあります。それならみんなで共用しようという思想の元作られたのが、大学共同利用法人でそのうちの1つが自然科学研究機構というわけです。でも装置だけを置いておくだけだともったいないので、研究所としての機能を持っている国立の研究所にその役割を持たせたという経緯があるとかないとか。*1

個々の研究所の創設は1975年まで遡り、大学で一般的な閉鎖的で非流動的な教室制を打破していくという理念もあったようです。途中で岡崎国立共同研究機構などの名前を挟みながら、自然科学研究機構という名前になったのは2004年だそうなので、割と最近ですね。あんまりコロコロ変えると覚えてもらえないような気もしますが、自然科学研究機構の方が格好いいので正解じゃないでしょうか。

 

ついでに学生も受け入れようというのが総研大

自然科学研究機構に限らず、大学共同利用法人は総合研究大学院大学というくくりの中で大学院生の受け入れを行っています。学部教育は行っていませんし、毎年各研究所に数人と少数ではありますが原則修士博士一貫の過程を持っているのです。総研大の仕組み等の記事は別で書こうと思いますが、普通に考えて大学が共同利用しようというレベルの施設で研究できるわけですから環境は破格です。しかも、原則として総研大の大学院生は研究所にResearch Assisstantとして雇われる形をとるので、年間100万円程度の給料が出ます*2

 

岡崎の基生研・生理研・分子研ってどんなとこ?

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自然科学研究機構の岡崎キャンパス

愛知県岡崎市には自然科学研究機構の一部である基礎生物学研究所生理学研究所分子科学研究所の3つが合わせて設置されています。都会でもなければ田舎でもないような東岡崎から歩いて5分程度の場所にメインキャンパスである明大寺地区が、そこから10分程度の場所に山手地区とロッジ施設があり、他都市からのアクセスはそこそこと言ったところでしょう。

 

基礎生物学研究所は分子細胞生物学が専門

私のインターン先でもあった基礎生物学研究所は基本的に細胞生物学や、進化多様性生物学、神経生物学など、生命現象を分子細胞レベルで解明することを目指した研究が行われています。他にも一部で視覚への計算機的アプローチやゲノムの情報学的な研究を行っている研究室があります。昆虫やプラナリアの研究などユニークな研究が多いのも基礎生物学研究所の特徴の1つでしょう。

オートファジーでノーベル生理学賞を獲った大隈良典先生も基生研でその一部の研究をされていました。

 

生理学研究所はヒトが持ってる機能専門

ヒトが持ってる機能というとざっくりしていますが、具体的には脳や皮膚、ホルモンなどの研究を行っています。中でも最も力が入っているのが脳科学研究で、半分以上の研究部門が脳科学、神経科学を研究しており、生理研の公式サイトでも脳研究が中心である旨が述べられています。

 

分子科学研究所は分子単体レベルが専門

上のキャンパスマップを見ればわかる通り、分子研は3つの研究所の中で最も大きく、予算も最大です。高出力レーザーやスーパーコンピュター、光源加速器などの大型装置を持ってして分子の研究をあらゆる角度から進めています。大型装置を持つが故に共同研究や論文発表などが三研究所の中で最も盛んです。*3

 

環境の良さは世界標準

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特に新しい山手地区は綺麗

前述の通り、大学の共同利用施設なわけですから研究環境は素晴らしいです。アメリカの一流研究大学や、東京大学を見ている私からしても十分それらと匹敵するものが揃っていると言えると思います。*4 私がインターンしていた研究室のある山手地区は建物も比較的新しく、内部も非常に綺麗です。どことは言いませんが日本の大学は建物や設備が老朽化していることも多いので、そういう意味でもアメリカ標準と言えるかもしれません。ちなみに山手地区には三研究所の研究室がごちゃ混ぜで存在しているようです。

大規模装置の特に多い分子研だけでなく、基生研・生理研にも共同実験設備が多くあり、自然科学研究機構の研究室はそれらを利用することができます。他の研究所の設備、例えば分子研のスパコンを使ったりすることもできるようです。

 

図書館や生協、休憩スペースもしっかりあります

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自然科学研究機構でも明大寺、山手の両地区に生協があり、食堂のない山手地区でもお昼はお弁当の購買を行っています。明大寺地区には図書館もあり、一通り研究所・大学に求められる機能がしっかりと揃っていると言えるでしょう。共同の休憩スペースをもう少し広く豪華にするとアメリカの研究所っぽくなりますね。

 

宿泊施設や会議場、テニスコートも完備

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共同利用施設ということもあり、研究者が格安で泊まれるロッジを保有しており、一人向けから家族用まで長期で滞在できる施設があります。また国際会議も開くことのできるカンファレンスセンターがロッジと同じ三島地区にあり、便利です。さて私が研究機関を評価するのに欠かせないのがテニスコートの有無ですが、ご安心ください。自然科学研究機構にもテニスコートが二面存在します。他にも何やら総研大生などが所属できるスポーツクラブ等が存在するようです。

 

気になったら体験入学・インターン

自然科学研究機構の研究所には体験入学制度があります。学部三年生から修士学生が対象で、特に基生研、生理研の体験入学制度は日程的にも内容的にもかなり融通が利くようです。海外大学に在籍している人は選考こそありますが、渡航費や滞在費をカバーしてもらえるインターン制度の利用も考えられます。興味がある研究室には積極的に連絡してみるといいでしょう。慢性的に学生不足なので、基本的には歓迎してもらえると思います。

私の個人的な意見になりますが、大学のように学生の非常に多い(悪くいえば騒がしい、良くいえば活気のある)環境より、研究所のような研究に集中する雰囲気があっている人というのは存在します研究職を考えている人は一度実際に足を運んでみることをお勧めします

 

はりねずみ的にまとめると

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*1:あんまり歴史は詳しく知りませんが、大筋はあっているはずです。

*2:研究所によって出る金額は上下するので詳しくはご自分で調べてみてください。

*3:Nature Indexでは分子研、基生研、生理研の順に研究力が評価されているようです。

*4:ものや分野によってはもちろん環境が上下することはあると思います。