Neurohog Reports

日米英で学校を卒業して、それぞれの大学・研究・テニス・海外生活について記事と漫画にしています。

東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻の院試合格体験記【外部受験】

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前置き

私はつい先日2020年4月入学の東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻を受験して、合格を頂きました。院試となると情報もあまり出回っていないようなので、最初の記事として広域科学専攻の院試について書き残したいと思います。あくまで情報は当時のものなので、受験される際には最新の情報をご自分で確認してください。何かしらの参考になれば幸いです。

 

 

 

 

ちょっとだけ背景

試験についてお話しする上で外せない背景だけ紹介すると、私はアメリカの大学に4年間通って学士の取得を目指した学位留学をしており、そこから理研の研究室に所属するための連携大学院制度の利用を前提として東京大学大学院を受験しました。中々に特殊なケースだと思いますが、その辺の事情は他の記事で紹介します。

 

受験したのは生命環境科学系

私が受けたのは広域科学専攻の中でも生命環境科学系で、試験は一次の筆記試験と二次の口述試験があります。*1 筆記試験の配点は英語200点と総合科目600点で、過去問はホームページで公開されているので確認してみてください。*2

 

一次試験の英語は三方式から選択

英語は当日にTOEFL ITPを受験する方法と事前にTOEFL iBTのスコアを提出する方法、その二つを両方やる方法の三つから選択できました。通常欧米の大学院では英語圏で学位を取得すれば英語試験は免除なのですがそういった仕組みはなく、私は当日にTOEFL ITPを受験する方法を選択しました。TOEFL iBTの4時間に比べてTOEFL ITPは短いので、ぶっつけ本番で実力を出す自信があれば当日受験がおすすめです。WritingやSpeakingがない分対策もし易いと思います。アメリカの大学受験時にTOEFLはかなり対策したのもあって、この院試に当たっての対策はしませんでしたが、英語はほぼ満点だった...はず。

 

総合科目は26問から3問選択

物理から生化学、身体運動科学まで幅広い分野から3問選択して解答します。それぞれの分野から最低でも3問以上の設問があるので、得意分野だけで解答することができます。この辺りが大学院受験が学部受験より簡単とされる所以でしょうが、受験生が皆得意科目で勝負してくると思えば油断はできません。この中で「神経科学」の3問だけは英語で出題されます。ここは毎年理研の連携教員が持ち回りで作る問題で、それぞれの専門分野周りから出題される傾向があります。解答に関しては全問英語日本語のどちらで回答しても構わないようですが、私は全て英語で解答しました。

 

対策として事前に連携先の教員から読んでおくと良い論文のリストを渡され読んでおきましたが、神経科学を真面目に履修しておけば特段難しいことはないレベルだと思います。ただ当日は認知行動科学の問題で自分の詳しい問題が出ていたので、実際には神経科学を2問、認知行動科学を1問解きました。解く問題をある程度決めていても、他の分野に目を通すと得するかも知れません。1時間1問ペースなので十分見て回る時間はあります。*3

 

白状すると面倒で得点開示はやっていません。所感としては3問とも完答して2問はほぼ完璧に1問は怪しいところがありながらといったところでしたが、後から教官によく出来ていたよと言って頂いたのでこの肌感でおおよそ合っていると思います。もっとも私の解いた問題は持っている知識をフル活用して書けるだけ書くような問題だったので、完答というより完成が正確かもしれません。

 

口述試験は優しい世界

二次試験の口述試験は一次試験の合格者にのみに行われますが、ほぼ形式的なもののようです。最終確認といったところでしょうか。私が受験した年も一次合格53名から二次合格50名でした。長さも一人当たり12分設定でとても短いです。ただし口述試験は生命環境科学系の中でもさらに三つのグループに分けて行われるので、グループによって傾向の違う可能性には注意してください。

 

私の口述試験は教授陣6〜7人が座っている小さめな部屋で行われました。終始ゆるい雰囲気で、筆記試験でどの問題が難しかったかとかこれまでの研究内容などに始まり、最後は何故か出身高校の話になりました。終わりに合否に関係ないからとの前置きの後併願について聞かれ、正直に日本では東大しか受けていないことと落ちればアメリカの大学院に出願することをお話ししました。特に対策が必要だとは思いませんが、筆記でできなかった問題があれば復習して解説できるようにしておくといいと思います。

 

どんな人に向いてるか

試験問題に神経科学関連の問題が8問も出るところは多くないので、学部で神経科学を中心に勉強してきた人にはかなり好条件です。*4 また専門科目の選択肢の広さ故に学部と違う分野に行きたい人や、他の研究科との併願をしている人も受けやすいでしょう。逆に総合力で勝負したい人は苦戦するかもしれません。総合文化研究科と聞くと理系研究室の無さそうな名称ですが、かなりの数の理系研究室があるので外部受験を考えている人はぜひウェブサイト等で確認してみてください。*5

 

 

 

*1:広域科学専攻には他に広域システム科学系と相関基礎科学系が存在します。試験日は同日でしたが筆記の内容は別になります。

*2:入試案内 ADMISSIONS | 東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 生命環境科学系

*3:「神経科学」以外の問題については実際に受験する研究室に行ってみて先輩に話を聞くのが確実だと思います。問題によっては決まった教科書を勉強するケースがあります。

*4:近いところで言うと理学系研究科生物科学専攻には神経科学の問題はありません。なんでや。

*5:東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻